警察の捜査は、あの夜のメンバーから始まった。
敦さん 玄有さん さっちゃん ともちゃんの順に行われた。
当然岡谷にも呼び出しはあったが、秋元さんが殺された時、彼も殺されかけていたので間違いなく容疑者から外されているので、どちらでもいいのだろう。
それから二日経ち、秋元さんの死因が判明した。
毒殺である。
どのような薬物をつかったのかは、僕達には分からない。
しかし、あらゆる事を知らなくてはいけない。
僕達の中の誰かに隠された事実があるに違いないのだから・・・
僕は、ふと思い出した。
焼肉店の店長の平山さんは、4年前まで岐阜県警の刑事だった。
なぜ刑事を辞めて料理人になったのかは僕は知らない。
ただ間違いなく元刑事だ。
「とにかく電話してみよう、きっと力に」なってくれる」
そう思った。
「もしもし、平山さん。今いいですか。」
「どうした、たけちゃん。」
「相談あるんですが、今から会えませんか。」
「いいよ、4時までに店にいけばいいから。」
「じゃあ、30分後にエルレで。」
「分かった、行くよ。」
エルレのママである直ちゃんが、僕が店に入るなり秋元さんの事についてあれやこれや聞いてきた。
まだ詳しい事は何も分からないことを伝え、アイスコーヒーを頼んで平山さんを待った。
それから15分して平山さんが到着した。
「ごめんね、たけちゃん。待たせたね。」
「いいえ、大丈夫です。」
「直ちゃん、ゴウヤジュース。」
平山さんは、いつもゴウヤジュースである。
「秋元くんの事で相談だろ、多分俺が元刑事だから・・・・・・。」
さすが、察しがいい。
僕は、今でも刑事だったころの仲間と付き合いがあるのではないかと思い、平山さんに事件について警察が分かっていることを探ってもらえないかと、お願いするつもりでいた。
「平山さん、お願いがあります。事件のことを・・・」
話の途中で平山さんが、言った。
「出来る限り俺が、警察から情報を仕入れて来る。まかせておいてくれよ。まだあっちには沢山仲間がいるから。」
「ありがとうごさいます。よろしくお願いします。」
平山さんの言葉によって、僕たちは本格的に動きはじめることになった。
とりあえず、今のところの仲間は、平山さん エヌ藤さん 原田ちゃん。
そんなとこだ。
そんな矢先、またしても悲しい事件が起こった。
ともちゃんが、死んだ・・・・・・・・・
結局僕は、その日一睡もできないまま、朝を迎えた。
やはり落ち着かない・・・
シャワーをあび、熱いコーヒーを飲む。
そして何処に行くあてもなく、車に乗り込む。
15分ほど走っていると、身に覚えのある車とすれ違った。
エヌ藤さんだ!
すぐさま電話を掛けた。
「もしもしエヌ藤さん、おはようございます、今から仕事ですか?」
「仕事する気分になれないから、休んだ。たけ、コーヒーでも飲みに行くか?今何処・・・」
「今、ちょうどエヌ藤さんの車とすれちがったとこですよ。岐南町のコメダでどうですか。」
「分かった、向かうよ。」
エヌ藤とは、もちろんあだ名である。
本名は、たぶん内藤とでも言うのであろう、僕はあまり気にしてなかった。
エヌ藤さんは、秋元さんの死について、最後の夜の事について、ぼくに細かく問い詰めてきた。
僕は、分かる範囲の事をエヌ藤さんに話し、なんとなく腑に落ちないいくつかの出来事についても話してみた。
あっと言う間に2時間ほど経った。
エヌ藤さんが言った。
「俺たちで、犯人見つけようぜ!」
何を言っているのだろう。
まだ警察は、犯人について何の情報もつかんでいないようだし、何も発表もされていない。
エヌ藤さんは、普通の生地の営業マンで、僕はただのバーテンダーである。
探偵の真似事など、到底できっこない。
ましてや、仲間に犯人がいるかもしれないというのに・・・
心の中でそうつぶやいた。
しかしエヌ藤さんの目は本気だった。
まるで名探偵コナンが犯人を追い詰めるときのような・・・
そういえば、エヌ藤さんと秋元さんの関係だが、小学校、中学校と同じ学校の同級生で、今でも仲のいい仲間である。
「エヌ藤さん、今僕達が熱くなってもどうしようもないと思います。たぶん2、3日もしたら警察から何か発表があると思います、それを待ちましょう。」
エヌ藤さんは、小さくうなずいた。
そういえば、あの朝秋元さんの携帯から僕に電話してきたのは、誰だったんだろう?
まちがいなく久実ちゃんの声ではなかった。
しかしどこかで聞き覚えのある声だった。
早く思い出さなければ・・・・・・
それから1時間後、久実ちゃんから電話があった。
「家に帰りました。」と・・・・・