結局僕は、その日一睡もできないまま、朝を迎えた。
やはり落ち着かない・・・
シャワーをあび、熱いコーヒーを飲む。
そして何処に行くあてもなく、車に乗り込む。
15分ほど走っていると、身に覚えのある車とすれ違った。
エヌ藤さんだ!
すぐさま電話を掛けた。
「もしもしエヌ藤さん、おはようございます、今から仕事ですか?」
「仕事する気分になれないから、休んだ。たけ、コーヒーでも飲みに行くか?今何処・・・」
「今、ちょうどエヌ藤さんの車とすれちがったとこですよ。岐南町のコメダでどうですか。」
「分かった、向かうよ。」
エヌ藤とは、もちろんあだ名である。
本名は、たぶん内藤とでも言うのであろう、僕はあまり気にしてなかった。
エヌ藤さんは、秋元さんの死について、最後の夜の事について、ぼくに細かく問い詰めてきた。
僕は、分かる範囲の事をエヌ藤さんに話し、なんとなく腑に落ちないいくつかの出来事についても話してみた。
あっと言う間に2時間ほど経った。
エヌ藤さんが言った。
「俺たちで、犯人見つけようぜ!」
何を言っているのだろう。
まだ警察は、犯人について何の情報もつかんでいないようだし、何も発表もされていない。
エヌ藤さんは、普通の生地の営業マンで、僕はただのバーテンダーである。
探偵の真似事など、到底できっこない。
ましてや、仲間に犯人がいるかもしれないというのに・・・
心の中でそうつぶやいた。
しかしエヌ藤さんの目は本気だった。
まるで名探偵コナンが犯人を追い詰めるときのような・・・
そういえば、エヌ藤さんと秋元さんの関係だが、小学校、中学校と同じ学校の同級生で、今でも仲のいい仲間である。
「エヌ藤さん、今僕達が熱くなってもどうしようもないと思います。たぶん2、3日もしたら警察から何か発表があると思います、それを待ちましょう。」
エヌ藤さんは、小さくうなずいた。
そういえば、あの朝秋元さんの携帯から僕に電話してきたのは、誰だったんだろう?
まちがいなく久実ちゃんの声ではなかった。
しかしどこかで聞き覚えのある声だった。
早く思い出さなければ・・・・・・
それから1時間後、久実ちゃんから電話があった。
「家に帰りました。」と・・・・・