彼女は、次のライブもその次のライブも来てくれた。
その頃には打ち上げにも自然と参加する仲間となっていた。
言葉は少ないが音楽の事になると、熱い気持ちのこもった言葉で俺達を感心させる。俺達にとって彼女の存在は、いつの間にか大きなものになっていた。
数日後…
「なゆちゃん、俺達の練習見にきなよ。」
バーカウンターの隣に居合わせたユウヤが言った。
俺もその言葉には賛同した。
しかしなぜか彼女は力なく言った。
「見たいな…でも多分いけそうにないです。
「お昼位ですよね練習…お昼は仕事で出れないんです…でも行きたいな~」
彼女は少し考えた後、
「やっぱり無理です。ありがとう、誘ってくれて。」
「そうか、仕事じゃ仕方がないな。時間が取れたら見にきなよ。」
ユウヤは少し残念そうだ。
それからもライブの度に彼女は来てくれた。
俺達と打ち上げまで参加し、いつも一人でタクシーで帰る。
彼女は岐阜市と大垣市の中間辺りに住んでいるらしい。
はっきりとした場所は言わなかったが、俺達もそれ以上詮索するつもりもなかった。
まだまだ彼女について、知らないことがたくさんあるようだ。
俺は、少し彼女に興味を覚えた。
彼女には、どんな過去があるのだろう?
ある晩、俺とユウヤはいつものマスターの店に飲みに行った。
さっちゃん・トモコ・なゆちゃんが3人でワインを飲みながら話していた。
「オウ、みんな楽しんでるね。」
「ネエ、直人は一緒じゃないの?」
トモコが尋ねた。
ユウヤが少し茶化して言う。
「ちがうよ、なんなら呼ぼうか?」
トモコは少し照れた顔で、
「別にいいよ!」
俺とさっちゃんは目が合い、笑いをこらえた。
そしてその日も長い夜は続いた。