俺達とその子の出会いは、青春ドラマのワンシーンのように始まった。
長い夏の始まり。
その子と共に…
俺(淳)、直人、ユウヤ、玄はバンドのメンバーである。
今日も俺達はバンドの練習を終え、名鉄新那加駅から乗りなれない電車に乗り込んだ。
ほんの10分ほどの移動だが、なぜかとても心が浮かれていたのは気のせいだろうか。
きっと俺は電車が好きだったのだろう。
「来月また乗ろう…今度は一人で…」
電車での小旅行もあっという間の終わり新岐阜駅に到着した。
駅を出て馴染みのバーへ行こうと歩き出すと大きな立体駐車場の建物の陰から、何やら物騒な話声が聞こえてきた。
「なんか、誰か絡まれてるんじゃないのか?助けにいこうぜ!」
変に正義感の強いボーカルの直人が言った。
「・・・」
俺は黙っていた。
直人が走った。
俺達も後を追うように無言のまま走った。
「おまえら、何やってんだ!」
直人が叫ぶと、見たところ20歳前後の若者たちは、バッと走って逃げていった。
そして背の小さな17・18歳ぐらいの女の子がそこに立ちすくんでいた。
「大丈夫だった?」
直人が優しく声を掛けた。
彼女は、一度俺達全員を見渡して「はい…」と一言だけ言った。
そして小さく頭を下げながら小走りで去っていった。
「ユウヤお前、警察官なんだからなんでこういう時に助けに行かないんだ!いつもそうだよな仕事離れるとまったく正義感のないヤツだな」
直人が言うと、みんな一斉にうなずいた。
「いいじゃない。俺が行く前に必ず直人が行くんだから~。何か事が起これば俺はいつでも行くつもりだぜ!」
ユウヤが強がる。
「だよな。まあとにかく店に行こうぜ。ビール飲みたいよ。」
玄さんが言った。
玄さんは俺達の中では最年長だが、と言っても2つしか変わらないが誰よりも若く見える。
とてもすてきなベーシストだ。
多分タバコとビールと焼肉があれば生きていける。
そこには女性は必要ないといった生き方の人なのだ。
多分…
そんなどうでもいいような事を思いながら、俺はさっきの女の子の事を考えていた。