その後もマスターと俺は、この店の事やバンドについていろいろとゆかさんに話しをした。
何分かするとちらほらとお客が入りはじめた。
そしてマスターも少しずつ慌ただしく仕事をしはじめた。
俺達2人だけの素敵な時間が始まった・・・
俺はすでに酔いはじめている。
少しペースを落として飲もうと思った矢先、ゆかさんがお代わりお注文した。
思わず俺も注文してしまった。
すでに5杯目・・・
ふと、自分の事ばかり話している事に気が付いた。しかもに1時間以上しゃべり続けている。
それでも笑顔で俺の話を聞いてくれているゆかさんに、ますます気持ちが引き寄せられていく・・・。
「ゆかさんは、仕事なにされてるんですか?もしかしてモデルさんなんじゃないですか?」
「とんでもないです!ごくふつうのOLです。そんな・・・モデルだなんて・・・」
少し恥ずかしそうにはにかんだ笑顔がとても素敵だ・・・
何時間でもこうして話していたい気分だ。
「そういえば、なゆちゃんがどんな仕事してるのか、俺達知らないんだった。ゆかさんなゆちゃん何してるんですか。」
この質問の直後、ゆかさんの表情が少しくもった。
でもお酒の入った俺は全く気が付かなかった。
「・・・子供雑誌にイラストとかを書いたりしています。」
「イラストレーターなんだ。すごいなー」
「知ってたらライブのチラシ頼んだのに。もしかして頼まれると思ったから内緒にしてたのかなぁ?」
「今度頼んでみてもいいかな?」
すっかり気分のよくなった俺は、次から次へと脳天気な質問をする。
「それにしてもなゆちゃん急がしそうですね、お昼何度かランチに誘ったけど毎回断られるから。夜しか会ったことないんですよ。」
少し沈黙が続いた。
「・・・」
「やはりみなさんには、言ってなかったですか。病気のこと・・・」
一気に酔いが冷める。
「病気!なゆちゃん病気なんですか。いつもすごく元気じゃないですか!」
ゆかさんの顔から切なく微笑みが消えていった。